LIPHLICH/フルコースは逆さから

2nd

1.街へ出よう(Instrumental)
街に出るどころかレストランと思われしところで食器の音が響いてる導入部

2.飽聴のデリカテッセン ★★
レトロでポップなポジパンナンバー
オールディーなパイプオルガンのおかげでデリカテッセン(飲食店)というよりは胡散臭い見世物小屋的雰囲気
食器のかち合う音をアクセントに使ったり細かいところで小粋ですね
このオレサマオマエマルカジリみたいなちょいコミカルメガテン風空気感がたまらん! でも早々に飽聴してしまいました

3.ヘンピッグ ★★★
スラッシュメタル風ドライヴ感あるギターメインで疾走していくノリノリぁげ↑ぁげ↑疾走パンク
こういう曲だけ聴いたらこのバンドとは相容れなさそうなサウンドの曲でも、毒々しくねちっこい声質のボーカル&コンセプトのしっかりした詩が乗るだけで独特ゴシックな雰囲気になるのが凄い!

4.慰めにBET ★★★
この手のバンドは何曲かやるだろうなと思ってたけどやっぱり期待を裏切らない軽快かつ怪しげなジャズポップ
タンゴっぽくて踊れるLIPHLICH、これはいいものだ
音質のチープさのおかげか、白黒テレビを通したようなモノトーンと古ぼけた映像を見てるような印象を受ける
その画面の中にはもってけセーラー服をノリノリで踊るLIPHLICHのメンバー姿が

5.VESSEL-Album Ver.- ★★★
廃聖堂風ゴシックシンセが冴え渡るLIPHLICH流歌謡ロック
リードギターもストレートで確かにかっこいいんだけど、素人耳にも何だか「初心者ギター教本・ステップ5〜ロックなギターを弾いてみよう〜」的本に載ってそうなフレーズで微妙
それでもこのストレートなキャッチーさにJ-POP耳のぼくは痺れちまったよ
艶っぽく儚げなボーカルを際立たせるためかAメロでは後ろに引っ込みがちの他の楽器隊達が、曲が進むにつれ前に出てきてサビでアンサンブルが爆発する構成もありがちな感じだけど最強!
王道、王道、オーケー、王道

6.大計画 ★★☆
超スロー&ダークでデカダンな荘厳ゴシックバラード
ヴィジュアル系のこういう曲はダレて飛ばすと相場が決まっとるのですが、銀●や黒子のバ●ケのキャラクターでカップリングを組んで興奮した状態における腐女子の女性器のようにねっちょねっちょなボーカルのムーディーな歌唱で見事に最後まで聴かせてくる
で、せっかくそんな稀有な曲なのに「これじゃああまりに地味すぎるか...」と思い装飾したのかアラジン風ラッビリーンスな単調ピアノが入ってくるのですがこれマジ蛇足!無駄!鬼!悪魔!人でなし!

7.マズロウマンション ★★★★
1曲目よろしくマンションというよりは洋館なイメージのゴシック&オカルティックシャッフルポップス
これは少しはビジュのビジュたる所以を考え直した大安売りでないシャフルリズムだわ
正にリフリッチ・ホラー・ショー
マズローの欲求階層説をマンションになぞらえたという詩もインテリな感じでイイネ!{3
視聴者はいきなり承認や自我の欲求に渇望する人間が住む四階に案内されるので、ぼくのような自尊心の強い糞ブロガーや自己主張大好きなツイッタラーや意識高いフェイスブッカー達はドキッとするはず。でも特に批判はされないのでホッ...
あとはピリリとした遠まわしな皮肉で他の階の住人を描写していく...そんな曲の雰囲気や詩がアヤビエのゴシックパーティーSSを彷彿とさせてくれてマジ感動
アヤビエであの曲大好きだったけど同じような曲は一回きりで二度とやってくれなかったからね
強いてケチをつけるなら曲中で執事の爺や演ずるボーカルが下手くそなのでふざけてる印象を受けるくらい

8.月を食べたらおやすみよ-Album Ver.- ★★★
ポケモンニャースの歌をゴシックかつ食人主義的に仕上げた感じのアコースティック哀愁バラード
冷めた感じのアコギのリフレインと歪んだギター&ベースのコントラストが素晴らしい
ボーカルの淑やかな部分とエモーショなる部分のメリハリもついててつい聴きいっちゃう
ボーカルのグッウナイアイハロディュマイルーミナスのコーラスで寂しげにゆっくりとフェードアウトしていくラストとかベタすぎるけど王道の言葉で片づけとく

9.Fiddle-De-Dee ★★★☆
ディスコサウンドの歌謡エレポップ
いい意味で2010年代の曲には聞こえない音質とオールディーなサウンドソフトバレエとかあの世代の曲と言われても違和感ないぞ
珍しく胡散臭い英詩を歌い出したボーカルも、曲の胡散臭い感じを助長しててマッチしてる...と思って歌詞カード見たらこれ日本語を英語風発音で歌ってるだけじゃねーか!こりゃ一本とられたわい!

10.ミズルミナス-Album Ver.- ★★
メンヘラ娼婦を主人公にした詩がそれほど印象的でもない、初期シドとかヴィドールあたりが得意分野としてそうな歌謡曲
8曲目と姉妹曲らしい
強いて良いところをあげるなら安易に狂気演出で激しくしたりせずに、淡白としながらも内に激情を抱いた嘆きの感じを上手く愁訴してくるボーカルと割と落ち着いた哀愁レトロな演奏とで魅せてくれるところ
ベースのソロも下手なギターソロよりかっこいいし...あれ?こうやって羅列していくといいとこ尽くめのはずなのになぜかイマイチな曲

11.ジョン&ジェーン・ドゥ★★★☆
冷たく浮遊感のあるホラーゴシックシンセと、他の楽器より前に出てきてスラッププレイをドヤドヤ披露するベースのコンビネーションがマッチして上手く不穏でガチホラーな空気を演出してるゴシックロック
前の曲もそうだけどやっぱLIPHLICHはさぁ〜、ベース。ベースがかっこいいよね(業界人風に)
だから無駄にド派手なギターソロよりベースソロを入れて欲しかったよ

12.MANIC PIXIE ★★★
怪しいミュージカルみたいに始まったかと思えば馬のいななきを合図に雰囲気そのままで疾走するポジパンナンバー
こういうナイトメアビフォアクリスマス的ディズニーチックな曲をやらせれば、というかやってるバンドも少ないと思うので右に出るバンドはなかなかいないと思うよ
色々挿入されてるゴシックな演出はいいけど曲がイチイマ

13.主人の楽園  ★★★
ラストに相応しく浄化されていきそうなゴシックバラード
ギターはときたま泣きのメロディを奏でるくらいでボーカルと一緒に曲を支配してるベースラインが気持ちいい
途中激しい演奏とボーカルが入ってくるあたりプログレチックにしたかったんだろうけど良くも悪くもあまり静と動は感じませんでした

14.シークレットトラック 
こぢんまりした行進曲風
このスケールの小ささがマジエンドロールしてていい〆になってる
ちなみに歌詞カードは13曲目から1曲目という真っ逆さまな曲順で記載されてたので、それに従い後ろから聴いてみたのですが、見事にこの曲がイントロダクションみたいな感じになってヤバい!曲順逆でもかっこいい!また別のストーリーが見えてくる!すげえギミック!ってなことはありませんでした

総評 ★★★☆
ブレたりせずに自らのコンセプトである「ゴシック&エキサイティング」をとことん貫いてるところが、やってる楽曲は違えど現代版マリスミゼルなイメージ
きっとメンバーには鶏肉しか食べないみたいな設定とかあるんでしょうね
つべで一曲試聴して気に入ったら、あとは全部同じような雰囲気の曲が揃ってるのでまず外れってことはないと思います
ガツンと来るキラーチューンはないけど全曲高水準で捨て曲駄曲らしい曲もない
ということで割と名盤なんですけど、品薄商法してるのかこのアルバムに限らずやたらCDが早く売り切れるのがネック