La’cryma Christi/Sculpture of Time

1st

1.Night Flight ★★★★
夕映えの空へとゆっくり飛翔していく飛行機の窓から、Vo.TAKA が白い歯を見せにこやかに手を振っている情景が浮かぶ、柔らかな耳触りのオープニングナンバー
サンセットタイムのリゾートビーチで生演奏してくれているかのような、並外れた表現力と技術でウォーミングな音を奏でる楽器隊。おかげで空へ向かうTAKAを、デッキチェアで優雅にくつろぎながら見送っているようなリッチな気分に浸れます。
さて、名残惜しいが我々もそろそろ腰を上げ、La’cryma Christiという名の飛行機に乗り込み彼の後を追いかけるとしよう。
しかもブックオフで250円出すだけで、この旅行のチケットは手に入っちまうんだから破格の値段っすよ。

2.南国 ★★★★
照りつけるまぶしい日差しのようなイントロで、我々は「南国」に到着したことを知る。
南国といっても、夏だ!海だ!ラクリマだ!みたいなはっちゃけた曲調ではなく、島を彩る艶やかな自然を写生したように、なだらかで麗しい曲調。この楽器隊の圧倒的情景描写力よ。 別に曲名や詩がなくても、椰子の木やエメラルドブルーの海が脳内に浮かんでくるよ。これぞトロピカルロック。
ボーカルも、TAKAがビーチではしゃぐ連添いの愛人をクールに見つめているかのようにナルシスティックだけど落ち着いた感じでキメてきます。でもサビになると我慢しきれなくなったTAKAが裸になって海へ飛び込むかのように爽快ポップに。シングル曲らしくて悪くないよ。

3.Sanskrit Shower ★★★★★
当初、ただでさえ楽器隊を塗りつぶしてしまうほどの強烈な声質なのに、それに加えて、どうしても曲に間延びする印象を与えるねっとりとナルった歌唱を披露するボーカルのせいで、ダレる捨て曲というのが第一印象でした。
そこでそんな21st century narcissitic boy・TAKAの、癖があるだとかハイトーンだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえもっと気持ち悪いものの片鱗を味わってしまう歌声を、頑張って無視することに決めたのです。
その途端、洒落た渋っ気を醸すムーディーなベース&左手のギター、それから、右手でボサノヴァ調のメロディラインを奏でる甘美なギターの調べが乗じ合い、至高の重奏が聴こえてくるではないか! まるで南の島で、巨乳のお姉さんがおっぱいをちょいちょい当てつつマッサージしてくているかのような快さ。
しかしリラクゼーションしている聴者に、「Sanskrit Shower」、日本語で言うところの「通り雨」が訪れる。
まずは大小様々な雨粒のような繊細さを持ちつつ、雨脚を操るかのように曲調、拍子、リズムを目まぐるしく変えながら弾き倒される間奏。特にギターソロはテクも情緒も溢れ出して、TAKAという濃過ぎる存在に隠れがちなギタリスト、HIROさんの恐ろしいまでのセンスを思い知ったよ。
ということで個人的ヴィジュアル系ギターソロがすごいよランキングで堂々の1位とさせていただきます。
そしてラストは曲の趣向を保ちつつ、鮮やかにハードな展開へ。
今までキモいと耳から拒み続けてきたボーカルですが、本人の声質や性格に似合わず「ナッシンペン!ナッシンペン!」と一生懸命ハードさを演出しようとするその姿に心打たれた。
そんな降り注ぐ荒れた夕立が過ぎ去っていくかのように静かにフェードアウト。
はい。
お見事としか言いようがない。これがラクリマ史上最強の曲に違いない!
しかしラクリマを聴き込んで、TAKAの声が「気持ち悪い」から「味があるな」と耳が意見を改めた今も、この曲に限ってはボーカルいらんインストでやれと思うことがままある。
この曲をシングルにしてくれたら、カラオケバージョンがカップリングに入ってTAKAありなし両方を気分に応じて楽しめたのに。

4.Ivory trees ★★★★
「かわいた街の中でいた 独りで歩いてた」との歌い出しの割には、瑞々しい街をTAKAが大股で闊歩するようなポップさがあるアッパーなシングル曲。
......ダメだ前の曲で色々ごちゃごちゃ書きすぎて疲れちゃったよ
無論、ただのポップスには収まらず.......みたいな月並みな解説になっちゃうんだろうけどそのうち感想書き直します!

5.Angolmois ★★★★★
どこか70'sUKロック臭がかほる、ブルージーな色気を見せる左手のギターが最高にいぶし銀な大作ハードロック。それにアコースティックな音色で、更なる哀愁とオールディーな雰囲気を添えるもう片方のギターもグッジョブ。
適当に言うならヴィジュアル系ミーツレッドツェッペリン。アルバムの中でも、浮いてるとまではいきませんが、ぽつり、厳とした存在感を放ってます。
ボーカルも「クローン人間をテーマにしました(キリッ」とかいう詩は別にどうでもいいけど、大人のバーで一杯傾けてるような雰囲気の気怠さが曲とマッチしててケチのつけようがない。
スローな曲調の上に6分もあるけど、言うまでもなくあっという間です。
ラクリマで好きな曲何?って聞かれたときに、これ褒めときゃ音楽通ぶれそうなので★+1。......い、いやそんな冗談抜きにしても、本当に「Sanskrit Shower」に次ぐ名曲だと思いますよ? 本当だよ?

6.Letters ★★
ミニアルバムに入ってた「Forest」からヴィジュアル系式憂いの美学を取っ払い、明るさだけを前に出してみたよ的プログレシッシブゆったりポップス
途中三拍子になって踊りたくなるところまで「Forest」と一緒だよ。ボーカルも「踊ろうよん♪」とか誘ってくるし。
悪くないけど「Forest」を聞いちゃった後だと、劣化劣化劣化ァ!とまでは言いませんが、ヴィジュアル系なんだからヴィジュヴィジュしたままでいろよと言いたくなるので★-1

7.偏西風 ★★★★
上記のヴィジュアル系式憂いの美学を多いに見せつけた陰気臭いけど美しいハイトーンボーカル。
加えて、もはや「ヴィジュアル系式」なんて言葉をつけてしまったらバチが当たりそうな、神々しいまでの憂いの美学が炸裂したアルペジオと、変拍子を織り交ぜた緻密かつハードなリフとの交錯。
この二つがユニゾンするラストなんてマジ偏西風。偏西風って未だにどんな風のことかよくわからないけどガチ偏西風。コリオリの力ってLa’cryma Christiがこの曲を奏でるときに起きる力のことだったんだな。
とりあえずプログレシッシブバンドがラストの展開に持ってくる、楽器から溢れ出した情緒、哀愁が九天の高みまで押し上げられたような荘厳な展開にただただ圧倒されたわ。
うむ、ギター以外のリズムセクションもむむむと唸っちゃう変則的な動きだし、まとめるとヴィジュアル系ファンもTDNロックファンも感動できるプログレシッシブ歌謡曲じゃ。「素肌のまま抱き合おう(シリアスッ)」なんて歌うボーカルに、口元が歪まざるを得ないけどそれを抜きにしても名曲だよ。
カップリング曲なのに、アルバム、その上ベストにまで収録されるというシングル曲並のプッシュのされよう。1人でも多くの人に聴かせたいらしい、ラクリマメンバーも一押しのナンバー。

8.ねむり薬 ★
ピックが弦に触れ一音が奏でられた刹那に、静謐な霧が立ち込め夢幻のカーテンが光を包むも、暗闇のキャンパスに暖色の絵の具をぽつりぽつりと落としていくかのように、新たな色彩が蕪雑ながら仔細に潤色されていく。
色艶が堆積され構築された、もの柔らかなヴァースは"ねむり薬”、畢竟、既にこの時点で現実との乖離を果たし、何人も無意志に朝を待つ間の陶酔へコンタクトを果たす。
既に一般的なロックのアトモスフィアではない。これは音楽なのか?はたまた絵画であるのか? .......そもそも芸術なのか?頭が混乱する。.......いやこれはキリストの涙"La’cryma Christi"だ。
前述のヴァースで既に点睛は与えられているが、続くブリッジ...コーラス...La’cryma Christiはさらに奏で、告げる。
世で試行錯誤し、新たな、斬新な、または自己を表現せんとする音を必死に追い求める音楽家達に告げる。 

もういいのだ。休めよ。眠れよ。

人々が言うところの"音楽"は、驚くべきことにこの "ねむり薬"で1997年に一度ピリオドが打たれていたのである。
ただ、多くの聴者がマンネリズムを感じてしまうのも無理はないことだろう。まさにリスナーの資質が問われる一曲であるとでも書くと思ったかあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
何この曲、マジダレる糞曲だな。8分!? はいはい大作大作高尚高尚。きめえボーカルで眠くもならねえよ。詩もなーにが「あなたの肌に会いたいよ」だ。気持ち悪い。オブラートに包んでるせどつまりはおセックスしたいってことだろ? かっこつけてんじゃねーよ。冗談は髪型だけにしてくれ
最初「相変わらず楽器隊テクニカルだし、何か褒めないといけない雰囲気あるし、これを糞と言いきっちゃったらセンスないと思われそうだな......適当に褒めて無難に★★★くらいつけとくか」と思って長々と書いてきたけどもうやめだ扇子なんて糞食らえだ!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ブボホブボボボボボブリュリュリュリュリュブリュリュリュリュリュリュリュ!!!!!!

9.THE SCENT ★★★★
「偏西風」の暗さからは対極に位置し、心地よい南風になびかれるような、明るめシャレオツスタイリッシュ快走ナンバー。そんな風を感じるギターに改めて脱帽。
そしてヴィジュアル系式憂いの美学とは言わないまでも、何処か切ない趣があるのは何故だろうか。
それは「北へ向かう 船の窓辺にもたれて 海を見続けていた」と、我々が「南国」からの帰途にあることを、TAKAが教えてくれたことで初めて気づくことができる。
そうか、名残惜しいけどそろそろこのアルバムにお別れを告げなければならないんだね。通りで爽やかなのに切ないわけだ。
しかし、シングルをリリースした当時、この曲がアルバムのエンドロールになるということを一体何人のリスナーが気づいていたのだろうか。
なるほど、Wikiで調べたらリリース順も「THE SCENT」→「南国」の順みたいだしわかり辛くしてやがる。
発売後、十数年を経て「俺たちのシングルはただの売れ線曲じゃない。アルバムのピースとしてしっかりハマるんだ」とラクリマのメンバー達の声が聞こえてくる......!
でも何だかTAKAが「計画通り」と夜神月風にニヤニヤしてるのが頭に浮かんできてムカつくので★-1

10.Blueberry Rain ★★★★
三部作Rainシリーズの第二段。
AメロBメロサビというよりは、旅行から帰宅したTAKAが全裸で窓辺に立ち、夜景を眺めつつ旅の思い出を振り返るかのように、1〜3曲目のように異国情緒漂うパート、6曲目のような70’sロケンローらしいギターフレーズが冴えた渋味あるパートを、鮮やかにリズムチェンジしながら移行していくと言ったほうが正しい、ラクリマらしいプログレシッシブな〆曲。
最後は歯切れのいいミドルテンポだったのが、8曲目ののうなスローテンポになってTAKAの素肌に優しく抱かれるような浄化ENDを迎えます。ついでに「Night Flightへ行こうよ」と、また一曲目から聴けよと暗に促してきますが流石に疲れた。

総評 ★★★★☆
何度も言いますが、やはり楽器隊の圧倒的情景描写力!
微に入り細に入り作り込まれたフレーズが、まるで風のおもくままにとでも言うべき自然さを持って、円転滑脱に、流麗に、曲調やリズムを変化させ、天候の移ろいやすい南の島の風景を構築して行く.......。仮にインストルメンタルだけでも、それぞれの楽曲が持つ世界が「Sculpture of time」の流れる部屋の中に現出され、瑞々しい南国の香りが漂ってくると思います!
それを他の楽器や機器を使わず、あくまで2本のギター、ベース、ドラムの4つだけでやってるというのだからびっくりぽんや。
もちろん、賛否両論ありつつも、それに華を添えるTAKAのハイトーンボーカルも注目だよ。
とにかくヴィジュアル系に限らず、他ジャンルのバンドでも容易に真似できるもんじゃないでしょう。加えて強力なタイアップもなしに大衆性を掴んだんだから、今後の邦楽界で、このような特異な独自性を保ったプログレシッシブサウンドかつ、10万近い売上なんてのは不可能とも言っていいんじゃないでしょうか。
やっぱりさ、「マニアックなことしてるから売れないんだ!」ってのは、
” 甘え ”
だよね。このアルバムリリース当時のCD馬鹿売れバブル考慮に入れてもさ。
え? TAKAがイケメンすぎる? 顔で売れた? 馬鹿野郎。
お生憎様、そ............そ、それは確かに一理あるかも知れないが、悔しかったらそこらへんのプログレバンドよ。歌の上手いイケメンでも美人でも雇って、尚且つこの作品並の完成度のアルバムを持って来やがれ! 話はそれからだ。
橋本環奈ちゃんがボーカルで握手券もつけてくれれば歌が下手くそでも買うからよろしく頼む。