Dir en grey/Vulgar

4th

1.audience KILLER LOOP ★★★★
いきなり聴いてる人の不安を煽るホラーSEから、京がおぞましい呻き声を上げ爆誕。そのまま重々しいギターリフと共にミディアムテンポのヘヴィロックバラードへ。
ただヘヴィなだけじゃなく耽美な音色のギターを曲に散りばめ、気味悪いヴィジュアル系様式美を出してるのがグッド。
それから静と動を上手く使い分けており、リズム隊だけを背に哀しげに歌うAメロ、冒頭で見せたヘヴィリフが入ってタイトルコールするBメロがそれぞれ際立ってます。
名言「ここは自殺の庭さ」が登場するサビも、激動の楽器隊を背に、ボーカルが低音から高音へと少しずつ盛り上がって行き感情爆発、悲痛炸裂。
さらにラストは圧巻。震エ゛ル゛ゥ!、震エ゛ル゛ゥ!(空耳)の、西野カナもあの変な帽子捨てて逃げ出すシャウト連呼で幕が下ります。

2.THE IIID EMPIRE ★★★☆
six uglyで開拓したミクスチャーロックにこのアルバムのダーク、ホラーさが加わり独特な、そうだな・・・、あえてジャンルを当てるなら・・・「Dir en grey」・・・かな(ファサッ
戦車の如きダウナーなヘヴィリフの嵐の中に、神経質で引き攣るようなギターフレーズやターンテーブルが違和感なく溶け込んでたり、とにかくブラックでラウドなミクスチャー。ベースまで歪み出してます。
何よりシャウトとデスヴォイスもといデスラップで曲中暴れまわる京さんパネェ。
戦争の汚い部分を余すことなく書き散らした詩は戦争の無意味さを伝えたとのことですが、何言ってるかわからないし、 とにかく戦場の中心でIを叫んでるような曲です。
魔人婦穴とか中々秀逸な造語。

3.INCREASE BLUE ★☆
前の曲に続いてぶっ飛ばしますが、これは別にジャンル「Dir en grey」(キリッではなく、six ugly寄りのロックナンバー。ヘヴィですがスピード感に溢れ軽快。
単調な疾走ギターリフは大して面白くないし、イッツアショータイム言ったり変声したりするボーカルの歌い方がなんか鼻につく。

4.蝕紅 ★★★ 
かごめかごめをディルアングレイ流にカバーしてみました的ラウド日本民謡
今までちと洋楽かぶれしてましたが、ここでそれにMACABREから甲羅を経てきたジャパニーズ中学二年性を足してきました。最初は歪んだ鈍重ギターが曲の妖しさ、美しさを損ねてるような気もしたんですけどね。聞き慣れたってのもありますが、いい感じに和洋折衷してるのでは。
身売りの少女が醜悪な夜の中、それでも心には夢、憧憬を抱いている、という詩は紳士なぼくには耐えられないえげつなさ。OBSCUREの主人公の少女時代でしょうか。
ですが、極彩色(ごくさいしき)をごくさいしょくと歌ったり、PIERROTのキリトさんとの仲の良さが垣間見える微笑ましい部分もあります。

5.砂上の唄 ★★★
京が目一杯歌唱力を披露した哀しき歌モノ。うら寂しく喪失感たっぷりですが力強い。ラップ、デスヴォイス、シャウトが飛び交うこのアルバムで、唯一全編クリーンボイスで綺麗な歌声を聞かせてくれる曲です。
ギターは虚しき二つのコードを繰り返すだけで完全にボーカルのサポートに徹してます。
そろそろゴリゴリギターに辟易してきていたのでこの配置は嬉しい。飽きやすいけどね。

6.RED...[em] ★★
DIEさんの乾いたカッティング混じりのグランジっぽいフレーズと、京のちょっと冷めた映画の主人公を演じてるようなボーカルから始まりますが、ラウドな他の楽器隊が入ると共に、熱きソウルが爆発するミディアムテンポのロック。
以後乾いたり熱くなったりの繰り返し。

7.明日無き幸福、呼笑亡き明日 ★★★☆
そこはかとなくジャジーな香りがする、シャッフル調のラウドロケンロー。最近のヴィジュアル系にはありがちナンバーですが、これがディルには地味に新しい。
ファストテンポでゴリゴリと進行して行きますが、サビはオーバードライヴしたギターが入って疾走感とキャッチー度アップ。
多様なスキャットが豊富に盛り込まれた京のジャズ風歌唱法も冴え、特に中盤のシャバダバビバは必聴、ってほどではないですか。
激しくどうでもいいし全く関係ないのですが、この曲を聴くと何故か小学生の頃ガキ大将だった和馬君を思い出す。

8.MARMALADE CHAINSAW ★★
ただの社会風刺、周囲への不満をぶつけた詩かと思いきや、映画「時計仕掛けのオレンジ」がテーマの曲らしい。
あの映画名作らしいですが、怖そうで見てないんですよね。
曲名よろしくチェンソーのようなギコギコしたヘヴィリフが特徴のミクスチャーパート→キャッチーさはあまりないですがラウドに開けるサビと、まあディルお得意の手法。
途中の変声でサイ゛ィ〜頭角ヲアラワスがDQN臭くて生理的に受けつけないので☆-1

9.かすみ ★★★☆
晩夏〜初秋あたりを想起させる、物悲しき哀愁を醸した和のギターの旋律とボーカルが美しいシングル曲。
相変わらずゴリゴリしたラウドなギターが前面に出て、上記のふつくしいギターは隠れがちなんですが、それがまた悲しい詩の乗った曲を儚くしてやがる。
シングル曲にしてはコンパクトにまとまりすぎてる気もします。
毎年夏の終わりは、これとBUCK-TICKの蜉蝣を聴かずには入られない。

10.R TO THE CORE ★★★
超キャッチー&アッパーなメロコア
パンクらしく二分弱の短い時間を京さんがデスヴォイスというよりはがなり声で叫び散らします。

11.DRAIN AWAY ★★★★
これが地味にすごいシングル曲。
詩に描かれた懐旧の念や落陽の茜色をそのままメロディーにしたようなミディアムテンポの歌モノを軸に、このアルバムのヘヴィロックからsix uglyのミクスチャー、MACABRE、鬼葬の日本美までが糾合されてます。
かといってごちゃごちゃしているわけではなく、ヘヴィリフ、Yo-Yoラップ、異分子のはずのものがどういうわけか渾然としてらあ。
終始鳴ってる薄気味悪いSEや、グルーヴ感溢れるベースも縁の下の力持ち。
中期ディルアングレイの名刺になると思ってたけどOBSCUREさんに隠れて結構影が薄い。

12.NEW AGE CULTURE ★☆
風刺と皮肉たっぷりの捨てハードコア。

13.OBSCURE ★★★★★
PVありのリードトラック。
イントロが1曲目を超える不気味っぷりでガクブル。
鬼眼や蝕紅の吉原ワールド曲最終章ってな感じで禍々しい和が炸裂してます。
縦ノリヘヴィリフと共にデスヴォイスとシャウトでのた打ち回るようなパートは後半に行くにつれ、より怨念が込められていきラストはとんでもない。
月に向かって哀しみを吠えるようなサビはファルセットなんかも入れ、美しいとはいえませんが趣きがあり、ヴォイヴォイパートとのコントラストがつきます。
とにかくこれは中学二年生が昼休みに流したい曲ランキングにランクインする。
曲があのインパクト絶大のマジキチ乱交PVに負けてる気もするんですけどね。
後にLotusのカップリングで再録されますが断然こっち派。あっちは外人にも出来そうだけど、こっちは日本人じゃなきゃ出来ない!

14.CHILD PREY ★★★
なんかサッカーの応援ソングみたいなのが始まりした。six uglyと同時発売されたシングル曲。素直にsix uglyに入れたほうがよかったんじゃ。
京とその他メンバーの男臭い掛け合いから、オーオーオーオーオーのコーラスが冴えた爽やかキャッチーなサビへ。かなり取っつきやすいですいが、ダークなこのアルバムから浮きまくってます。
刃牙の主題歌だったらしく、確かにチョオチョオチャイルドプレイッ騒がしいAメロなんかからはカマキリと闘う京の姿が見えるかも。
baroqueの唄と並ぶ二大ヴィジュアル系スポーツソング。

15.AMBER ★★★
ロートーンの京のボーカルが男臭くてかっこいいミディアムテンポのグランジ風ロックバラード。「声が枯れるまで歌おう」と、ベタですが力強い決意を見せて終わります。

総評 ★★★★
個人的にディルで一番好きなアルバム。今のディルに繋がるメタル化がどんどん進んできてますが、このアルバムではまだヴィジュアル系の色と壇蜜的色気も強く、正に「中期」。
何事も中庸が大事です。