筋肉少女帯/キラキラと輝くもの

1.冬の風鈴~序文
アコギとオーケンの朗読のまったりした導入部分。

2.小さな恋のメロディ ★★★★☆
ピロピロギターと壮大ハードなギターで始まりますが、それは最初と最後だけ。橘高さん作曲ですが、どちらかというとメタルというよりは哀愁ヘヴィロック。
詩は同名の映画をモチーフ。映画は見たことありませんが、主人公二人はラストシーンの後、きっと地獄へ行ったと叫んでおり、詩もメロディもひどく厭世的です。

3.機械 ★★★★★
うおおお、メっカメカな硬質のリフがたまらねえ!! 橘高さん曲っぽいですがおいちゃん作曲。物凄くキャッチーですが、胸が苦しくなるほど切ないマッドサイエンティストヘヴィメタル
この切なさは詩のせいもありますが、「サーチライト」を作ったときの本城さんの苦しみが主な原因らしいです。

4.僕の歌を総て君にやる ★★★★
三曲続けて厭世的です。
ちょ、ここまでくっさい、ストレートなラブソングはオーケンソロを除けば筋少初なのでは?
病んだ鬱メンヘラ青年が初めて君に愛を打ち明けるロマンチックメロスピナンバー。ぼくが高校の頃血尿出して「俺は近いうちに死ぬんじゃないか?」と思い込んでたとき、片思い中のあの娘を思い浮かべてこればっか聴いてましたよ。
曲はゴリゴリヘヴィに畳み掛けるパートからスケール大きい超美麗なサビ。そしてトドメの哀愁クラシカルなギターソロ。橘高ファンなら射精するんじゃないかしら。

5.サーチライト ★★★★★
これはオーケン一世一代の詩じゃないてましょうか。 オーケン個人に限らず、おそらくアーティスト全員が一度は心に思うであろうことを、この人ははっきり言葉にしてざっくばらんに告白しています。
9分半のファンクナンバーに乗せて、自分の才能に対する疑問、ファンに媚びる自分への嫌悪。心底から書きたくて作品を書いているのか、それとも今やただ周囲からの承認を得たい、名誉、名声欲を満たすがためなのか、などなど。 病的なほど自己に立ち返り苦悩の中で溺れに溺れています。
詩先で、本城さんも曲を作るのに相当難産したらしいです。悩みに悩み、何回もの試行錯誤の結果、この怪作ファンクが完成。
とにかくこれぞ本物の文学ロックだ! アルバムや曲名に著名な文学のタイトル引用したり、詩に難解な言葉並べるだけの衒学的なサブカルアーティスト共よ見習え!(二回目)

6.そして人生は続く ★★★
流れぶったぎり・・・というより、ここからアルバム第二部と考えたほうがいいかも。
首を横に振りたくなるような非常に明るいポップス。
詩は、爺さんになり老人ホームに入ったら昔片思いだったあの娘と再開、愛を誓うというロマンチックすぎて映画化できそうな内容。なるほど、そして人生は続く。すごくいいテーマじゃないですか。

7.ザジ,あんまり殺しちゃダメだよ ★★
再び明るいポップス。タイトルのおぞましさはほとんど感じられません。

8.ベティー・ブルーって呼んでよね ★★☆
筋肉少女帯の歌を書いている♪で始まるなんかメタ的というか現実的というか・・・。まあ5や9や10もそんな感じなんですが。
曲はようやく落ち着いた感じで、温かいアコースティックなポップス。

9.お散歩モコちゃん ★★
一見珍曲、ふざけた曲に聞こえますが、子どもとの対話による5へのアンサーソング? 「全人類をたった一人で救ってみせるという空想にとりつかれているんだよ。バンドは便宜的に利用しているだけなのかもしれないね」とか。
音楽というよりオーケン文学。プラトン的です。
「周りの人間はなんでこんなにバカばっかりなんだろと思ってたら 自分のほうがバカな奴だったんだよなぁ、うん」

10.冬の風鈴 ★★★
1の完全版。途中からバンドサウンドが入るも、やはりまったりしてます。
正月にこたつ入りながら詩を書く文筆家オーケンが浮かんでくる。
穏やかに静かにアルバムの幕はおります。

総評
メンバー同士が険悪になるなか、筋少メロディーメーカー本城さんのモチベーション全開で制作されたアルバム。そのためかなり聴きやすく初心者にもおすすめ。さらに彼の最高傑作を争う曲が2つも収録されてます。
内田さんの曲がないのも取っつきやすさの原因かも。マニアックな変態プログレがないという意味なので、ファンには物足りなさもあるかもしれませんが。
オーケンは病みに病んだ後の結論を出し自己超克、とまではいきませんが一つの到達点へ。
名盤です。