特撮/パナギアの恩恵

1.薔薇園 オブ ザ デッド ★★★★
ギターやベースは引っ込みがち、代わりにピアノが前に出てきて胸を締め付けられるほどの哀愁を醸し出しているラウドロック
というかこの曲に限らず、今回はギターよりもピアノが主張してるアルバムになってますね。
このやるせなくも燃え尽きるほどヒートな情熱が見え隠れする様、これは個人的に特撮版トリフィドの日。
元ネタや深い意味はないようですが、こちらの詩にも食虫植物なんかが登場しますし。
オーケンは前作の五年後の世界で見せたパンク歌唱法ですが、なぜかスイミング帰りのような疲労が感じられ、それが上記のやるせなさと情熱の均衡を絶妙に保っているぜ!
ガツンとくる曲だしジャケの世界でてるあたり、おそらくリードトラック。

2.くちびるはUFO ★★★
くちびるの艶やかさと、UFOらしい怪しげな浮遊感のある歌謡ロック。でも雰囲気は暗め。やはりピアノが光る。
オーケンが80年代化粧品のCM云々インタビューで語ってましたが、サビメロの古臭さは確かにそんな感じ。2012年でもcali≠gariの暗中浪漫に引き続き、ジュエリーマキのCMに使えそうです。
そんなタイアップ級聞きやすい曲をアルバム曲に持ってくる特撮はすげェ!
しかしシングルレベルのインパクトがあるかと問われれば微妙。

3.タイムトランスポーター2「最終回ジャンヌダルク護送司令・・放棄 ★★★☆
前の曲よりUFOっぽい流れで入る、なかなかポップなSF物語調ロック。
この手の曲にハズレなし!
サビの15世紀と21世紀を比べて「人のしてることは変わらない 憎しみ裏切り騙し合い 恋とか そんなとこだよ」
そう、この諦念。 この諦念感がボーカルや曲に満ちていて苦しい、苦しいよ! 全体としては結構面白い詩なのに、憂鬱で息苦しい印象を与えます。
最後は護送放棄して、ジャンヌダルクはビキニではしゃぎながらも、世界はタイムパラドックスが起こって消えていくってのも切ないね。
筋少でも最近「若いコとドライブ」とか時間系SFモノやってましたが、あっちのほうが特撮っぽく、こっちのが筋少っぽい。
個人的リードトラック。

4.GO GO! マリア ★★
露骨に震災を題材にしてるナンバー。
脳髄、はらわた、腎臓だのなかなかえげつないワードが散りばめられ、津波が通り過ぎた後的張り詰めた空気のハードロックパートから、復興的、我々の次の世代のマリアが動き出す前向きキャッチーなサビへ。
詩はいいですけど曲が地味ですね。それからBメロのヒューヒュー歓声SEが雰囲気に合ってないのでいらないです。

5.桜の雨 ★★★☆
正に桜花爛漫。始まった瞬間にCDコンポが部屋に春を運んでくる、雅趣に富んだパワー歌謡バラード。
オーケンのセンチメンタルなボーカルもさることながら、とにかく桜吹雪とも降り注ぐ雨ともとれるピアノのシャワーがふつくしい・・・。さらにそれがうっすらとしたストリングスと絡んで最っっ高!!
後ろで地味にシューゲイズしてるギターも百花とまではいきませんが、三十花くらい添えていい仕事してます。
この曲なら紅白の演歌爺さん婆さんタイムに混じって参加しても違和感ないんじゃないかしら。客観的リードトラック。

6.Arion〜Hommage Claude Debussy
特撮定番ピアノ小休止。

7.鬼墓村の手毬歌(Short Edit Ver.) ★★★☆
一応シングル的ポジションの曲ですが、色んな意味でアルバムから浮いてます。途中からセミ鳴き始めるし。
簡単に言えば推理小説もとい推理音楽。aメロ→bメロ→サビというより、小説的起承転結の進行。
最初は金田一耕助シリーズな事件を、ジャジーで落ち着いた演奏に乗せてオーケンと声優さんが交互に歌いあげる淡々としたパート。このパートが一番長い、そして声優さんのウィスパーヴォイスっぷりが可愛い。どうやら絶望先生関連の人らしいです。
そしてピアノが火サスな寸劇、子どもが歌う不気味な手鞠歌を挟んで解決パートへ。オーケンの推理講釈と思いっきりジャズしてるエディさんとで畳みかける怒涛の展開!ここがかっこいいんですが、結構あっさり終わっちゃいます。
ショートバージョンなのに6分、通常バージョンは一体何分あるんだろう。 DVDスルーしたので通常バージョン聴けてないんですが、ベストあたりに収録されませんかね。

8.13歳の刺客 エピソード 1 ★★
エディ作曲。
前の曲と微妙にピアノが繋がってるのでややこしい。
SF、ミステリときて今度は時代劇。
すみません、飽きました。

9.じゃあな ★★★★
「じゃあな」ってタイトルがいいですよね。「じゃあな」。
タツタに突っ走るドラムは思いっきり青春しており、ピアノには卒業式的前向きな悲しみが。
NARASAKIの轟音高速リフもここに来てようやく入り、オーケンの詩にはサーチライト以来初?の中原中也まで登場。
曲名もあってか、なんだか「特撮も筋少も解散するんじゃねえの?」ってほどに集大成的なものを感じてしまいます。
「夏の日に夢が破れて 秋日狂乱デーデー屋 冬は狐の革ごろも 悲しみが汚れる時さえあるとしても 」の熱のこもったCメロでなんかウルッとくるので☆+1

10.ミルクと毛布 ★★★
オーケン作曲。
ゆったりとしたのほほんハートフルナンバー。
ちょっと前まで「子どもじゃねえんだ赤ちゃんなんだ!」とか「あばばあばば踊る赤ちゃん人間」とか叫んでた人が、温かい目で赤ちゃんを見守ってますよ!
その感慨から★+1、オーケンはおっさんですが母性愛が溢れ出てます。
どうでもいいですが最初「毛布、毛布」の部分が空耳で「毛布、思ふ」に聞こえ、何か深いものを感じてました。
じゃあなのほうが曲名も曲調もラストトラックにふさわしい気がしますが、最後にオーケンの恩恵を授かれるこんなヌクモリティ溢れる終わり方もいいかも。

総評 ★★★☆
詩に関しては絶望関連や五年後に引き続き、相変わらず復活後筋少より筋少してる印象受けました。というか46歳にしてどんどん進化してる?
おそらく今年最後のCDとなりそうですが、それがこのアルバムでよかったです。2012年を締めくくる名盤。

思い返せばヴィジュアル系の新譜は2、3枚しか買ってねえ。